わが家の保障の穴 ―― 遺族年金を引いて、本当に足りない額は?(2028年改正対応)

保険で備える額を考える前に、公的な保障(遺族年金)と団信を先に引くと、本当に足りない額が見えてきます。2028年4月からは、子のない60歳未満の配偶者への遺族厚生年金が原則5年の有期になります(子がいる場合は、子が18歳の年度末を過ぎてから5年)。今の制度と改正後を並べてみましょう。

概算です(主要部分だけ)。遺族年金の細かい条件・改正の経過措置の一部・継続給付の収入による調整・死亡分割・税金の細部は計算に含めていません。教育費は別に見てください(ライフイベント表へ)。
亡くなった場合を考える人
会社員・公務員として働いた年数です(ねんきん定期便で確かめられます)。自営業だけなら0年にすると、遺族厚生年金は0円で計算します。25年未満でも300月(25年)とみなして計算します。
遺族厚生年金の計算に使います。これまでの平均の給与を「今の年収÷12(月65万円まで)」で近似しています(仮定)。
残される配偶者
妻が残る
夫が残る
今の制度では、遺族厚生年金・中高齢寡婦加算の条件が妻と夫で違うため、分けて計算します。
配偶者の手取りは、このサイトの手取り計算と同じ計算(独身として・65歳まで同じ年収で働く前提)で出しています。今の年収なら手取り 年85万円。改正後の「継続給付」(年収122万円以下で全額)の判定にも、この年収を使います。
子ども
ここでいう「子ども」は、遺族年金でいう「子」です。
  • 18歳になった年度の3月31日までの子(高校卒業のころまで)
  • または、20歳未満で障害等級1級・2級の子
  • どちらも結婚していないことが条件
18歳の年度末を過ぎた子(大学生など)は、人数に入れないでください。子が全員18歳の年度末を過ぎると、遺族基礎年金は止まります。
出典:日本年金機構「遺族年金」。この計算では、障害のある子も18歳の年度末で区切っています(1年単位の近似)。
上の子は、2歳ずつ離れていると仮定して計算します。
住まい
持ち家(団信あり)
持ち家(団信なし)
賃貸
団信(団体信用生命保険)があれば、もしものときに住宅ローンの残りが0になる前提で、ローンの返済を0円にします。
生活費とそなえ
初期値70%は筆者の仮定です。家族が1人減る分、生活費は今より少なくなると考えます。
死亡退職金・弔慰金は、勤務先の規程で確かめられます。分からなければ0のままで構いません。
公的保障・団信・配偶者の収入・貯蓄を引いたあと(妻が65歳になるまで)
大きな不足は見当たりません
いちばん下の子が18歳の年度末を迎える約15年後(妻が51歳のころ)で、遺族基礎年金(いまは年133万円)は止まります。上の子が先に18歳の年度末を過ぎるたびに、子の加算も減っていきます。
改正後は、遺族厚生年金が子が18歳の年度末を過ぎてから5年間は約1.3倍の「有期給付」になり、その後も、妻の年収が122万円以下のため「継続給付」として65歳まで続くとして計算しています。改正の前後どちらでも、大きな不足は見当たりません。
子がいる間とその後で、遺族年金はこう変わります(年額)
期間(妻の年齢)遺族基礎年金遺族厚生年金
改正前
遺族厚生年金
改正後
子がいる間
36〜50歳(15年)
109〜133万円62万円62万円
子が18歳の年度末を過ぎてから5年
51〜55歳(5年)
止まる・なし125万円144万円
その後
56〜64歳(9年)
止まる・なし125万円144万円
遺族厚生年金には中高齢寡婦加算を含みます。「子」は18歳の年度末までの子です(上のボックス参照)。改正後の「5年」は約1.3倍の有期給付、そのあとは継続給付(年収122万円以下で全額)として計算しています。
年ごとの「入るお金・出るお金」
0140万280万遺族基礎年金ここまで36歳50歳64歳
遺族基礎年金(子がいる間だけ)ほかの入るお金(改正後)改正で減る分改正で増える分出るお金
横軸は妻の年齢です。棒(入るお金)が線(出るお金)より低い年が、貯蓄などで埋める必要のある年です。点線の「遺族基礎年金ここまで」(51歳)で、濃い色の部分が無くなります。
内訳(妻が65歳になるまでの合計)
改正前改正後
遺族基礎年金(子がいる間)1,954万円1,954万円
遺族厚生年金(中高齢寡婦加算を含む)2,678万円2,937万円
配偶者の手取り2,459万円2,459万円
貯蓄・死亡退職金300万円300万円
出るお金(生活費・家賃)−7,308万円−7,308万円
遺族厚生年金は年62万円(15年の加入・年収600万円から)。団信により、住宅ローンの返済は0円として計算しています。
この結果の読み方

公的保障を引いたあとの差額が、保険で備えるかどうかを考える「出発点」です。教育費は含めていないので、別に見てください。

大きな不足が無いなら、保険を増やすより、今の保障が重なっていないかを見る方が効くことがあります。

改正は、2028年4月以降に新しく遺族年金の受け取りが始まる場合が対象です。今入っている保険が無駄になるわけではありません。

まず自分でできること
  • ねんきん定期便で、厚生年金の加入期間と見込み額を確かめる
  • 勤務先の死亡退職金・弔慰金と、団信の内容を確かめる
  • 今の保険の保障額を一覧にして、公的保障との重なりを見る
計算の前提と出典(2026-10-08 時点)
  • 今から、残された配偶者が65歳になるまでを1年ずつ計算し、各年の(生活費×割合+家賃)−(遺族年金+配偶者の手取り)を合計して、貯蓄・死亡退職金を引いています。物価の上昇・運用・税金の細部は入れていません。
  • 「子」は遺族年金でいう子(18歳になった年度の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の子。どちらも結婚していないこと)。この計算では障害のある子も18歳の年度末で区切っています。
  • 遺族基礎年金は令和8年度の額(年847,300円+子の加算:2人目まで各243,800円、3人目から各81,300円)で、子が全員18歳の年度末を過ぎた年に止まります(1年単位の近似)。子が2人以上なら2歳ずつ離れていると仮定。
  • 遺族厚生年金は、報酬比例部分(平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数、300月未満は300月とみなす)の3/4。平均標準報酬額は「今の年収÷12(月65万円まで)」で近似しています(仮定。平成15年3月以前の期間の乗率の違い・賞与の上限は入れていません)。
  • 今の制度:妻は子が18歳の年度末を過ぎても続く(30歳未満で子のない妻は5年)。中高齢寡婦加算(年635,500円=遺族基礎年金の3/4)は、条件を満たす妻に40〜65歳の間(子がいる間を除く)。夫は死別時55歳以上なら60歳から、55歳未満なら子がいる間だけ(子に支給される分として世帯の収入に入れています)。
  • 改正後(2028年4月以降に新たに亡くなった場合):60歳未満で死別した配偶者は、子がいる間は今と同じ。子が18歳の年度末を過ぎてから(子がいなければ死別から)5年間は、有期給付加算が付いて今の遺族厚生年金の約1.3倍(厚生労働省の説明。この計算では×1.3)。その後は、年収122万円以下なら継続給付として65歳まで同じ額が続くとしています。
  • 要確認の前提:①約1.3倍は「約」のため概算です。②継続給付の122万円は「単身の場合」の目安で、それを超えると収入に応じて減額(概ね月20〜30万円超で全額停止)されますが、調整の式が分からないため、この計算では122万円を超えたら0円にしています(不足は多めに出ます)。③女性で改正の対象になるのは「2028年度末時点で40歳未満」の人ですが、この計算は今の年齢で判定しています(今38〜39歳の妻は、実際には対象外の可能性があります)。
  • この部分は計算に含めていません:死亡分割(65歳からの老齢厚生年金への上乗せ)・継続給付の収入による調整・中高齢寡婦加算の段階的な縮小・子の加算の見直し(増額)・配偶者自身の老齢年金。
  • 配偶者の手取りは、このサイトの手取り計算(calcTakeHome・独身として・協会けんぽ全国平均の料率)で、65歳まで同じ年収で働く前提。生活費の割合70%・各入力の初期値は筆者の仮定です。
ほかの計算ツールを見る →
【計算ツールのご利用にあたって】
  • ・計算結果は、遺族年金の主要部分だけを使った概算です。実際の受給額・受給資格は、日本年金機構(年金事務所)でご確認ください。特定の保険商品のおすすめではありません。