家計2026-09-30

城は、石垣から積む ―― 家計の見直しは、順番で決まる

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執筆:オペラシンフォニー(元大手証券の営業15年/CFP)

家計の見直しは何から始めればいいのか。総務省の家計調査、生命保険文化センター、住宅金融支援機構、国税庁の数字をもとに、固定費・保険・住宅ローン・資産形成・相続の順番で、FPの目線から整理しました。

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城づくりは、天守より先に石垣を積みます。どれだけ立派な天守を建てても、足元が崩れれば終わりだからです。家計も同じで、「何に投資するか」より先に、「毎月出ていくお金が固まっているか」を見る方が確実に効きます。

家計の見直しを始めようとして、どこから手をつければいいのか分からなくなる人は少なくありません。この記事では、公的な調査の数字をもとに、見直しの順番を5つの段に分けて整理します。

家計の見直し、どこから始める? 6問チェックで確かめる

まず、平均の家計を見ておく

総務省の家計調査によると、2025年の二人以上の世帯の消費支出は、月平均314,001円でした。働いている世帯(勤労者世帯)の実収入は月653,901円で、そこから税金と社会保険料(非消費支出)が121,493円引かれ、手取りにあたる可処分所得は532,408円です。収入の約19%は、使う前に引かれています。出典:総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2025年平均

ただし、この可処分所得は1人の手取りではありません。働いている人が平均1.81人いる世帯の合計で、共働きの配偶者の収入も入っています。夏と冬のボーナスも12か月にならして含まれています。世帯主の平均年齢は51.0歳です。

同じ家計調査を、世帯主の年齢別に見るとこうなります(勤労者世帯・月平均)。

世帯主の年齢可処分所得配偶者の収入(実収入のうち)消費支出住宅ローン返済
29歳以下458,253円110,941円266,960円33,693円
30〜39歳552,696円128,576円306,220円50,117円
40〜49歳578,733円128,946円353,622円49,549円

[出典:総務省 家計調査 家計収支編 2025年 詳細結果表(表3-2 世帯主の年齢階級別)]

30代の可処分所得は月55.3万円ですが、そのうち世帯主の収入は48.1万円で、配偶者の収入12.9万円が加わった合計です。どちらもボーナスを12か月にならした数字なので、片働きの家庭や、ボーナスを除いた毎月の手取りで見ている家庭には、かなり多く感じるはずです。

住宅ローンの返済は、30代で月5.0万円になっています。これはローンのない家庭も含めた平均です。実際に借りている家庭だけで見れば、上で見たフラット35の月8〜16万円の方が実感に近いでしょう。

30代と40代を比べると、可処分所得は月2.6万円増えるのに、消費支出は4.7万円増えます。子どもが大きくなり、教育費や食費が増えていくからです。可処分所得から消費支出と住宅ローン返済を引いた残りは、30代の月19.6万円から40代では17.6万円に減ります。生命保険料や貯金、投資は、この残りの中から出していきます。家計に一番余裕が生まれやすいのは30代で、ここで石垣を積めるかどうかが、40代以降の楽さを決めます。

厚生労働省の国民生活基礎調査でも、30代は1人あたりの所得が年253.7万円と、働く世代の中で一番少なくなっています。全世帯の所得の中央値は451万円で、平均の575.2万円を下回る世帯が61.5%あります。平均は一部の高い所得に引っぱられるので、「平均より少ない」と感じるのが普通です。[出典:厚生労働省 2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況(2024年の所得)]

費目(二人以上の世帯・月平均)金額
消費支出 合計314,001円
交通・通信45,730円
うち通信11,672円
光熱・水道24,547円
住居18,678円
教育11,939円

住居が1.9万円と小さく見えるのは、家賃や修繕費だけを数えていて、住宅ローンの返済は消費支出に入らないからです。持ち家の家庭では、家計簿の外にもう一つ大きな固定費があります。

配偶者のパート収入が、どこから世帯の手取りに響くのかは、年収の壁、2026年はどうなった?にまとめています。

平均は、子育て世帯の実感より軽い

この平均を見て「うちはもっとかかっている」と感じた方は多いと思います。その感覚は正しいです。家計調査の平均には、子どもが独立した高齢の世帯や、ローンを払い終えた世帯も入っています。スマホを1台しか持たない世帯と、家族4人がそれぞれ持つ世帯も、同じ「1世帯」として平均されます。

そこで、子育て中の4人家族に近い数字を、別の調査から拾い直してみます。

項目平均の家計(上の表)4人家族に近い数字
消費支出(月)31.4万円36.3万円(4人世帯)
スマホ代(月)通信 1.2万円約3.5万円(大手キャリア1人8,802円×4人)
住宅ローン返済(月)消費支出に入らない約8〜16万円(物件の種類で違う)
生命保険料(月)約2.9万円約2.9万円(世帯の平均)

[出典:生命保険文化センター(総務省 家計調査年報より)/MMD研究所 2026年8月 通信キャリア調査(Web担当者Forum)/住宅金融支援機構 2024年度フラット35利用者調査]

スマホ代は、通信料に端末代の分割払いを含めた金額です。住宅ローンは、フラット35を使った人の1か月あたりの予定返済額で、中古の一戸建ての約8.4万円から、土地付きの注文住宅の約15.1万円、新築マンションの約16.0万円まで幅があります。ここまで足すと、4人家族の「毎月ほぼ決まって出ていくお金」は、平均の数字よりずっと重くなります。

引かれるお金も、備えのお金も上がっている

家計を重くしているのは、使うお金だけではありません。使う前に引かれるお金と、もしもに備えるお金も上がっています。

財務省によると、税金と社会保険料を合わせた負担が国民所得に占める割合(国民負担率)は、2024年度の実績で46.7%、2026年度の見通しで45.7%です。国の借金として将来に回している分まで含めると、2026年度は48.4%になります。所得のおよそ半分が、税と社会保険に回っている計算です。出典:財務省 令和8年度の国民負担率

2026年4月からは、医療保険料に上乗せする形で「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。会社員なら、年収500万円で月約479円、年収800万円で月約767円が本人負担の目安です。加入者1人あたりの平均は、2026年度の月約300円から2028年度には月約500円まで段階的に上がります。協会けんぽでは、医療分の保険料率が9.90%に0.1ポイント下がった一方で、介護分は1.62%に上がりました。高齢化が進む限り、介護や医療の負担は上がる方向だと考えておく方が現実的です。[出典:freee(こども家庭庁の試算より)/GemMed(協会けんぽ 2026年度保険料率)]

損害保険も値上げが続いています。

保険値上げの内容時期
自動車保険(任意)大手損保で約6〜8.5%、各社で過去最大2025年10月〜2026年1月
自賠責保険全車種平均で6.2%、13年ぶり2026年11月から
火災保険保険料の基準(参考純率)を全国平均13%引き上げ2024年10月ごろから各社

[出典:大手損保の自動車保険値上げ(業界ニュース)/自動車検査登録情報協会/Lify(2023年の火災保険参考純率改定)]

理由はどれも同じ方向です。車の修理代や部品代、医療費、自然災害による支払いが増えています。物価が上がる時代には、備えのための保険料も一緒に上がっていきます。

反対に、生命保険の払込保険料は、世帯の平均で前回調査の37.1万円から35.3万円に下がりました。金利が上がって、保険会社が見込む運用利回り(予定利率)が引き上げられ、同じ保障でも新しく入る方が安くなる商品も出ています。上がる保険と下がる保険が同時にある今は、中身を見直すのにちょうどいい時期です。[出典:生命保険文化センター/マイナビニュース(2026年9月)]

見直しは5つの段で考える

見直す順番は、効き目が確実なものから、時間がかかるものへ並べます。

段見るもの目安になる数字
1固定費(通信・サブスク・光熱)4人家族のスマホ代 月約3.5万円(大手キャリアの場合)
2保険(生命保険・自動車・火災)生命保険は年平均35.3万円、自動車・火災は値上げが続く
3住宅ローン返済は月約8〜16万円、利用者の75.0%が変動型
4資産形成(NISAなど)NISA口座 約2,826万(2025年12月末)
5相続亡くなった人の10.4%が相続税の対象

1段目:固定費は、一度直せば毎月効く

固定費は、見直した効果が毎月、自動で続きます。家計の見直しの中で、効き目がいちばん確実で、失敗しても損がほとんどないのがここです。

いちばん差が出やすいのがスマホ代です。MMD研究所の2026年8月の調査では、端末代まで含めた月の支払いは、大手4キャリアが平均8,802円、格安SIMが平均4,330円で、約2倍の差がありました。4人家族なら月に約1.8万円、年に約21万円の差になります。しかも大手キャリアの利用者のうち51.7%は、実際に使っているデータ量が月7GB以下でした。大きな容量のプランに入ったまま、使い切れていない家庭が少なくありません。

最近は端末そのものも高くなり、分割払いが通信料と一緒に引き落とされるので、何にいくら払っているのかが見えにくくなっています。一度、明細を「通信料」と「端末代」に分けて見るだけでも、見直すところが分かります。

乗り換え先を見るときは、料金とあわせて、お住まいの地域で通信が安定して使えるかも確かめます。候補のひとつとして、楽天モバイルの公式の案内も見られます。

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通信費、動画や音楽のサブスク、使っていない有料会員、電気とガスの契約プランを、まず一覧にして並べます。「使っているか」ではなく「なくなったら困るか」で残すものを決めると、迷いが減ります。

2段目:保険は、厚いところと薄いところを確かめる

生命保険文化センターの2024年度の調査では、二人以上の世帯の89.2%が生命保険に入っていて、年間の払込保険料は平均35.3万円です。月にすると約2.9万円で、通信費の2倍以上になります。一方、世帯主の普通死亡保険金額は平均1,936万円で、下がり続けています。出典:生命保険文化センター 2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査

保険の見直しは、生命保険だけの話ではありません。値上げが続く自動車保険と火災保険も、更新のたびに補償の中身と保険料を見比べる価値があります。火災保険は、インズウェブ(PR)のような一括見積もりで、何社かの保険料を並べて見られます。車両保険の免責金額や、火災保険の水災補償が本当に必要かどうかで、保険料はかなり変わります。

そして、見直しは単に保険料を下げる話でもありません。子どもが小さいうちの死亡保障のように厚くすべきところと、公的な保障や貯金で足りるところがあります。入った時から家族の形が変わっていれば、中身も合わなくなっているはずです。

ただし、昔の生命保険には、今より有利な予定利率で入っている契約もあります。新しい方が安く見えても、先に解約してしまうと元の条件には戻れません。乗り換えるなら、新しい契約が決まってから古い契約を見直す順番にします。

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3段目:住宅ローンは、金利が動く前提で見る

住宅金融支援機構の調査(2026年1月)では、住宅ローン利用者の75.0%が変動型を選んでいます。そして同じ調査で、金利が上がったときに返済額がどう増えるかについて「少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」と答えた人が、合わせて52.0%いました。出典:住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)

日本銀行は2026年9月の会合で、政策金利を1.25%程度に引き上げました。出典:幻冬舎ゴールドオンライン(2026年9月) 変動金利は、この動きに合わせて少しずつ上がっていきます。

フラット35の利用者で見ると、年収に対する年間の返済額の割合(総返済負担率)は平均23.2%です。手取りではなく額面の年収に対する割合なので、実際の手取りから見れば、もう一段重く感じるはずです。

住宅ローンは金額が大きいので、金利の小さな差が総返済額の大きな差になります。今の金利、残りの期間、残高の3つを手元に出して、金利が上がったら月の返済がいくらになるかを一度計算しておくのが第一歩です。借り換えが得かどうかは、その計算のあとで考えます。

金利が上がったら、返済がいくら増えるか計算する

4段目:資産形成は、石垣ができてから

NISAの口座は2025年12月末で約2,826万口座になり、1年で約267万口座増えました。出典:野村證券 FinWing(2026年調査のまとめ)

資産形成は大事ですが、ここを4段目に置いているのには理由があります。投資のリターンは約束されていません。一方、固定費や保険料を減らした分は、確実に手元に残ります。確実に残るお金を先に作り、それを毎月の積立に回す。この順番なら、相場が下がった月でも積立を止めずに済みます。

積立を続けたら100歳までのお金がどう動くかは、100歳までのお金を、1分で見るで確かめられます。

5段目:相続は、元気なうちに話す

国税庁によると、2024年に亡くなった約160万人のうち、相続税の対象になったのは約16.7万人、割合で10.4%でした。10人に1人が相続税の申告の対象になっています。出典:国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要

相続は、税金の対象にならない家庭にも関係します。家や預金をどう分けるか、親が判断できなくなったときに誰がお金を管理するか。これは、親が元気なうちにしか決められません。5段目にしているのは大事でないからではなく、準備に家族の話し合いと時間がかかるからです。

私の考え:増やす前に、漏れを止める

証券会社で15年、お金の相談を受けてきて思うのは、見直しの順番を飛ばしてしまう人が多いということです。投資の話から入りたくなる気持ちはよく分かります。ただ、毎月の固定費と保険料が重いままでは、どれだけ良い商品を選んでも、積立に回せるお金そのものが増えません。

石垣は地味で、積んでも目立ちません。それでも、この先の数十年を支えるのは石垣の方です。一段ずつ、確実に効くところから積んでいくのがいちばんの近道だと思っています。

各段の詳しい話は、お金のガイドで順に書いていきます。

まとめ

家計の見直しは、固定費、保険、住宅ローン、資産形成、相続の順番で考えると迷いません。国の平均は二人以上の世帯で月31.4万円ですが、子育て中の4人家族では、スマホ代だけで月3.5万円前後、住宅ローンの返済が月8〜16万円と、実際の負担はもっと重くなります。効き目が確実な固定費から始め、確実に残したお金を資産形成に回し、相続は家族が元気なうちに話しておく。この順番が、家計の石垣になります。

よくある質問

Q. 家計の見直しは何から始めればいいですか?

A. 通信費やサブスクなどの固定費からがおすすめです。一度見直せば効果が毎月続き、失敗しても損がほとんどありません。スマホ代は大手キャリアと格安SIMで1人あたり月4,000円以上違うこともあり、家族の人数が多いほど差が大きくなります。そのあと保険、住宅ローンの順に見ていくと迷いません。

Q. 生命保険料の平均はいくらですか?

A. 生命保険文化センターの2024年度の調査では、二人以上の世帯の年間払込保険料は平均35.3万円、月にすると約2.9万円です。金額よりも、今の家族の形に中身が合っているかを確かめることが大切です。

Q. 住宅ローンが変動金利のままで大丈夫か不安です。どうすればいいですか?

A. まず、今の金利、残りの期間、残高をもとに、金利が上がったら月の返済額がいくらになるかを計算してみてください。住宅金融支援機構の調査でも、変動型の利用者の半数ほどが金利上昇時の返済額に不安や理解不足を感じています。借り換えや固定金利への変更を考えるのは、その試算のあとです。

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