「冷やして安静」は、もう古い? ケガの応急処置の新しい考え方
執筆:オペラシンフォニー
捻挫や打撲の応急処置は「冷やして安静」のRICEが定番でした。2019年に発表されたPEACE & LOVEの考え方をもとに、冷やしすぎず、痛みが強くならない範囲で少しずつ動かすという新しい流れを紹介します。
練習中に足首をひねった。ベンチで氷を当てて、「今日はもう安静にね」と声をかける。多くの親御さんが、そうやって子どもを守ってきたと思います。我が家もそうで、氷や湿布で冷やして、できるだけ動かさないようにしていました。
その考え方のもとになっているのが「RICE(安静・冷却・圧迫・挙上)」という言葉です。長いあいだ、応急処置の合言葉として親しまれてきました。ところが近年、スポーツ医学の世界では「とにかく冷やす」「とにかく安静」という部分が見直されはじめています。この記事では、その新しい流れをご紹介します。正解を押しつけるものではなく、家庭での一手を選ぶための材料として読んでみてください。
日本の家庭でよくある対処
けがをしたら、まず氷でしっかり冷やす。痛むあいだは動かさず、じっと安静にする。この二つは、今も広く行われている対処だと思います。すぐにできて、悪化を防ぐ意味では役に立つ場面もあります。
ただ、「冷やし続ける」「長く安静にする」ことが、いつでも回復の近道とは限らないようだ、という報告が出てきました。
いま参考にされている「PEACE & LOVE」
2019年、二人の研究者(DuboisとEsculier)が、英国スポーツ医学誌に「PEACE & LOVE」という新しい考え方を発表しました。捻挫や打撲、肉離れといった、いわゆる軟部組織のけがを対象にしたものです。
- PEACE(けがをした直後)=保護・挙上・炎症を抑えすぎない・圧迫・正しく知る
- LOVE(数日後から)=適度に動かす・前向きに・血流を促す・体を動かす
ここでのポイントは二つです。ひとつは、腫れや熱は体が治そうとしている自然な働きでもあるので、薬やアイシングで抑えすぎないほうがよい場合がある、という視点。もうひとつは、痛みが強くならない範囲で早めに少しずつ動かすこと(適度な負荷)が、回復を助けると考えられている点です。
おもしろいことに、RICEという言葉を1978年に広めた医師自身も、のちに「氷と完全な安静は、かえって治りを遅らせることがある」と述べています。
整形外科にかかったときは、「安静にしつつ、痛みが弱まって動かせるなら動かしてよい」と言われました。ずっと動かさないのが正解ではない、という点は、このあと紹介する考え方とつながっています。そのときは、そうして治りました。ただ、別のやり方と比べたわけではないので、どちらがよかったとは言えません。
こんなときは、様子を見ずに受診を
PEACE & LOVEは、捻挫や打撲、肉離れなどの軟部組織のけがを想定した考え方です。骨折や重い靱帯の損傷が疑われるときに、動かして様子を見るための話ではありません。次のようなときは、自己判断で動かさず、整形外科などを受診してください。
- 痛くて体重をかけられない、歩けない
- 骨のあたりを軽く押しただけで、飛び上がるほど痛い
- 関節や骨の形が明らかに違う、腫れが急に大きくなってきた
- しびれがある、足先や指先の色が悪い、冷たい
- 頭を打った、気分が悪い、ぼんやりしている
- 数日たっても痛みや腫れが引かない、むしろ強くなる
なお、この記事で「冷やしすぎない」と書いているのは、痛みをやわらげるために短時間冷やすことまで止める意味ではありません。冷やして楽になるなら、短めに使って大丈夫です。迷ったときは、受診のほうを選んでください。
今日から家庭でできること
- ひどく冷やし続けない。冷やすなら短めにとどめ、長時間の連続使用は控える
- 「絶対に動かすな」と縛りすぎない。痛みが強くならない範囲で、少しずつ動かしてよい
- 子どもを不安にさせすぎない。「大丈夫、少しずつ良くなるよ」という前向きな声かけも回復の一部
成長期のひざの痛みは捻挫とは別のものなので、オスグッド病とは?成長期のひざの痛みもあわせて読んでみてください。ケガを防ぐ準備運動の今の考え方は、運動前のストレッチ、実は逆効果?で紹介しています。
まとめ
「冷やして安静」が間違いというわけではありません。ただ、今は「冷やしすぎない・動かしていい」という方向に、考え方が少し変わってきています。どちらを選ぶかは、けがの様子とお子さんの状態を見ながらで大丈夫です。条件は選べなくても、その中の一手は選べます。新しい情報も、参考のひとつとして手元に置いておいてください。