運動前のストレッチ、実は逆効果?──静的から動的へ、準備運動の新常識
執筆:オペラシンフォニー
運動の直前に静的ストレッチだけをすると、力が出にくくなることが分かってきました。今の主流は「動きながら温める」動的ストレッチ。FIFAの予防プログラムもまじえて、準備運動の新常識を整理します。
「運動の前は、しっかり体を伸ばしてから」——アキレス腱を伸ばし、開脚して、ゆっくり静止する。子どものころ、そう教わった方が多いと思います。
ところが、この「運動直前にじっくり伸ばす」やり方は、いま見直されています。むしろ力が出にくくなることが分かってきたのです。今回は、準備運動の新常識を整理します。
昔の常識:運動前に、じっくり伸ばす
長らく準備運動といえば、筋肉をゆっくり伸ばして20〜30秒静止する「静的ストレッチ」でした。体をやわらかくしてから動けばケガをしない、という考え方です。
今の常識:運動直前の静的ストレッチ「だけ」は、力を下げる
近年の研究で、意外なことが分かりました。運動の直前に静的ストレッチだけを行うと、筋肉の力やパワー、走るスピードがむしろ一時的に下がってしまう、というのです。伸ばしてゆるめた直後の筋肉は、いわば力を発揮する準備が一度ほどけた状態になるためと考えられています。
代わりに主役になったのが「動的ストレッチ」。体を動かしながら、関節を大きく使って筋肉を温めるやり方です。もも上げ、ランジ、スキップ、ももを抱える、体を大きくひねる、脚を前後・左右に振る——こうした動きで、心拍と体温を上げながら、これから使う動きに体を慣らしていきます。研究でも、動的ストレッチを行った方が、走るスピードなどのパフォーマンスが高まると報告されています。
海外の定番:FIFAがつくった「FIFA 11+」
この考え方を、世界の育成現場で形にしたのが、サッカーの国際団体FIFAがつくった「FIFA 11+(イレブンプラス)」というウォームアッププログラムです。走りながらの動き、体幹やバランス、ジャンプの着地の練習などを組み合わせた、15前後の種目からなる動的な準備運動で、全体で20分ほど。練習前に週2回以上続けるのが目安とされています。
注目すべきは効果です。このプログラムをきちんと続けたチームは、ケガのリスクがおよそ3割減った、と複数の研究で確認されています。しっかり取り組んだチームでは、半分近くまで減ったという報告もあります。準備運動を変えるだけで、それだけケガが減る。世界のアカデミーや代表・プロチームで広く使われているのも、うなずけます。
ケガをしてしまったあとの手当ての、いまの考え方は、「冷やして安静」は、もう古い?にまとめています。
じゃあ静的ストレッチは不要?──いいえ、場面が変わっただけ
ここで誤解しないでほしいのが、静的ストレッチが悪いわけではないこと。体をやわらかく保つ(柔軟性を高める)効果はしっかりあります。大事なのは、使うタイミングです。
- 運動の前:動的ストレッチで、動きながら温める
- 運動の後(クールダウン):静的ストレッチで、ゆっくり伸ばして整える
- 柔軟性そのものを伸ばしたいとき:運動とは別に、お風呂上がりなど体が温まったタイミングで
つまり「前は動的、後は静的」。順番を意識するだけで、力も出やすく、ケガも減り、疲れも残りにくくなります。これはサッカーに限らず、走る・跳ぶスポーツ全般に共通する考え方です。
水分補給の「常識」の変わり方は、「とにかく水を飲め」も行き過ぎ?にまとめています。
家や試合前に、今日からできること
- 集合前のアップに、もも上げ・スキップ・ランジ・体ひねりなど、動きながらのメニューを取り入れる
- いきなり全力ではなく、ゆっくり大きな動きから始めて、少しずつスピードを上げる
- 運動後は、太ももや ふくらはぎ をゆっくり伸ばして終える
- 成長期は骨や腱がまだ弱いので、動的でも静的でも、反動をつけず痛くない範囲で
寒い日は、アップのあと試合までに体が冷えやすくなります。待ち時間の過ごし方は、冬のサッカー、親の段取りにまとめています。
成長期のひざの痛みが気になるときは、オスグッド病とは?成長期のひざの痛みも参考にしてください。
準備運動は「じっくり伸ばす」から「動きながら温める」へ。世界の常識は、もう切り替わっています。
※お子さんの体調や成長には個人差があります。痛みや不安があるときは、指導者や医療機関など専門家にご相談ください。
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出典