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育成・コラム2026-09-23

「早く一つに絞ると有利」は本当?──米国では当たり前の“複数スポーツ”と最新研究

執筆:オペラシンフォニー

「本気でうまくなるなら、早くサッカー一本に絞るべき」——日本ではよく聞く考えですが、世界のトップ選手のデータや、米国に根づく育成の文化は、むしろ逆を指しています。実は「早く絞れば有利」のほうが新しい発想。最新の研究とあわせて整理しました。

「本気でプロを目指すなら、早くサッカー一本に絞ったほうがいい」——日本では、なんとなくそう信じられています。ライバルより早く始め、一つの競技に時間を注ぎ込むほど有利だ、と。

ところが、世界に目を向けると、話はむしろ逆向きです。トップ選手ほど子ども時代は複数のスポーツをやっていて、一つに絞るのは10代半ば以降。今回は、この「早く絞れば有利」という思い込みを、データと海外の文化から見直します。

## 「早く絞れば有利」は、実は新しい発想

意外に思うかもしれませんが、「幼いうちから一つに絞って鍛えるべき」という考えは、それほど古くありません。きっかけの一つが、1990年代に生まれた「1万時間の法則」。ある技術を極めるには膨大な反復がいる、という研究です。

これがスポーツに、しかも子どもに、そのまま当てはめられました。「一日でも早く始めて、量を積んだほうが差がつく」。折しも、通年・単一競技のクラブや遠征チームが一大産業になり、この20年ほどで「早期専門化」が一気に広まったのです。つまり、昔からの常識どころか、比較的新しいブームでした。

## むしろ「複数スポーツ」が昔ながらの当たり前

対照的なのが米国です。米国では、秋はアメリカンフットボール、冬はバスケットボール、春は野球、というように、季節ごとに競技を替えて育つのが昔からの当たり前でした。複数スポーツは、新しい提案ではなく、もともとの文化なのです。

そして近年の研究は、この昔ながらのやり方を裏づけています。

- ドイツの五輪選手約1,500人を調べた研究では、国際レベルに届いた選手ほど、主となる競技を始めた年齢がむしろ遅く、子ども時代に他の2競技もやっていました。 - 米国の大学1部(NCAA)の選手でも、約45%が16歳ごろまで複数の競技を続けていて、チーム競技では12歳以下で一つに絞った選手はいませんでした。

バスケットボールのレブロン・ジェームズが、子どもにアメフトもやらせるべきだと語り、早すぎる専門化に警鐘を鳴らしてきたのも、この文脈です。

## なぜ「複数スポーツ」がいいのか

理由は大きく三つあります。

一つ目は、ケガのリスク。同じ競技ばかりだと、同じ関節・筋肉に負担が集中します。研究では、一つの競技に特化した子どもは、そうでない子に比べてケガ(とくに使いすぎによる障害)の割合が高いと報告されています。一年のうち多くの月を一つの競技に費やすほど、その傾向は強まります。前回とりあげたオスグッドのような成長期の障害も、この「負担の集中」と無縁ではありません。

二つ目は、運動の土台の広さ。走る・跳ぶ・投げる・体をひねる——競技が違えば使う動きも違います。子どものうちに幅広い動きを経験しておくと、身体の使い方の引き出しが増えます。これは近年「フィジカル・リテラシー(体を動かす基礎力)」と呼ばれ、後から特化したときの伸びを支える土台になると考えられています。

三つ目は、燃え尽きを防ぐこと。一つの競技だけを幼い頃から詰め込むと、勝ち負けのプレッシャーや「やらされ感」が積み重なり、10代の途中で心が折れて競技そのものをやめてしまう子が少なくありません。複数の楽しみを持っていることは、長く続ける支えになります。

## 「いつ絞るか」の目安

とはいえ「絞ってはいけない」という話ではありません。大切なのは順番とタイミングです。海外の育成モデルでよく使われる目安は、おおむね次のようなものです。

- おおよそ小学生年代(6〜12歳ごろ):いろいろな競技・遊びを幅広く体験する時期。楽しむことが最優先。 - 中学年代(13〜15歳ごろ):好きな競技へ、少しずつ比重を移していく時期。 - 高校年代(16歳以降):一つの競技に本格的に打ち込む時期。

つまり「早く絞る」のではなく、「土台を広げてから、あとで絞る」。この順番のほうが、最終的には遠くまで行ける、というのが今の考え方です。

## 日本の親子へ

ここで日本を振り返ると、少年団や部活を中心に、一つの競技を通年でやり込むスタイルが根づいています。それ自体が悪いわけではありません。ただ、「早く一本に絞るほど有利」という思い込みだけは、いったん手放してよさそうです。

- サッカー以外の運動を「遠回り」と思わない。水泳、陸上、鬼ごっこや外遊びも、立派なトレーニングです。 - オフシーズンや休みの日に、あえて違う体の動かし方をしてみる。同じ負担の連続を断つだけでも、ケガの予防になります。 - 「一年中サッカーだけ」に不安があっても、焦らなくて大丈夫。世界のトップも、子ども時代は寄り道だらけでした。

更新すべきは「昔からの常識」ではなく、むしろここ20年で広まった「早く絞れば有利」という新しい思い込みのほう。子どものうちは、いろいろな動きを楽しむ。それが遠回りに見えて、実はいちばんの近道かもしれません。

※お子さんの体調や成長には個人差があります。運動量やケガの不安については、指導者や医療機関など専門家にご相談ください。

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出典

- [The Fallacy of Falling Behind: The Realities of Early Sports Specialization(米国整形外科スポーツ医学会 AOSSM)](https://www.sportsmed.org/membership/sports-medicine-update/fall-2024/the-fallacy-of-falling-behind-the-realities-of-early-sports-specialization) - [Sports Specialization and Overuse Injuries in Adolescent Athletes(米国小児科学会 AAP/Pediatrics)](https://publications.aap.org/pediatrics/article/138/3/e20162148/52426/Sports-Specialization-and-Intensity-of-Training-and) - [Early Sport Specialization(アメリカ整形外科スポーツ医学会 STOP Sports Injuries)](https://www.stopsportsinjuries.org/STOP/Prevent_Injuries/Early_Specialization.aspx)

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